報 告 Ⅰ
テーマ解説
杉岡 直人氏(北星学園大学教授)
わが国のこどもの貧困率は、14%(OECDのデーター)と指摘され、また生保受給世帯で30万人、貧困状態とされるこどもの数は300万人に達しいる。阿部彩さん(首都大学教授)などの研究で家庭の貧困がこどもの生育、学歴や職業に影響を与え、格差となっている。
2009年から子どもの健全育成事業が始まり2013年には子どもの貧困対策法が制定され、生保世帯だけでない生活困窮者に枠を広げて自立支援事業が各地で取組まれている。
今日の「まなべぇ」や「Kacotam」の実践は、学習支援がどのように展開されているか、現状や課題が報告されると思う。社会福祉基金としても学習支援関連の問題を課題にしていきたい。
報 告 Ⅱ
札幌市の学習支援事業「まなべぇ」
古野 由美子氏(さっぽろ青少年女性活動協会)
青少年女性活動協会は、平成24年札幌市の「学びのサポート事業」を受託して、児童会館を会場に、生保世帯や就学援助世帯の中学生を対象に、学習支援事業を実施している。最初は西区で5会場40人が現在全区30会場500名の規模に広がった。
一会場は概ね、児童会館職員2名と大学生5名でこども15名ぐらいで構成され、6時15分から8時15分、週1回2時間の活動が基本だ。 何か教える授業でなく、子どもたちがやりたい、勉強したいものを持ってくる。 学生さんには、単に答えを教えるのでなく、勉強の仕方を教えてと子どもたちには、分からないことはわからないと率直に伝えて、お願いしている。 個別のやりとりだけでなく、自己紹介のゲームやお楽しみ会、また山登りや、大学の学食体験などいろいろな体験学習の機会も設ける。
お互いのやり取りの中で、子どもたちには、ここにいていいのだという安心感や、受容感を持ち、自己肯定の気持が出てくる。職員も大学生も大きく変わって、寄り添うことができていく。
時には家庭、保護者への関わりが課題になるが、エンパワーメントと言う言葉を大切に、可能性を引き出して行きたい。
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報 告 Ⅲ
Kacotam学習支援事業
高橋 勇造氏(NPO法人Kacotam理事長)
児童養護施設での学習ボランティアから始まり、学びの格差の解決を目指し「Kacotam」を立ち上げ、2014年にNPO法人格を取りました。 学ボラ事業は児童養護施設や母子生活支援施設など7~8ヶ所を訪問して、学習支援を実施しています。
スタサポ事業は、ひとり親家庭や生保世帯の子ども(小1~高3)を対象にした学習支援で、市内4会場で開催しています。
3つめのリラーニング事業は、再度学習を目指す若者を対象にした学習支援です。
スタサポ事業は、4会場で80名ぐらいの子どもたちに、国・数・理・社の基本的科目をサポートする事が主たる活動ですが、他にいろいろ
取組んでいます。
手稲さと川探検隊の協力で、川遊びとキャンプ等の自然体験学習、藤女子大の協力で料理教室カレー作り、SEAの協力で英会話教室など実施しています。これら新しい体験をすることは、子どもにとって自信や肯定感につながっています。
さらなる取り組みとして子どもの悩みや、不安、やりたいと思っていることを形にする取り組みです。ゲームのプログラマーになりたいと考えている高3生に、実際のプログラミング教室を開催したり、希望の職業についている社会人に話を聞きに行く「お仕事Kacotam」、また中3の男の子が料理ができることをヒントに、料理教室の料理長としみんなに食べてもらいたいという希望をかなえるなどです。
これらの取り組みは、「学びの機会」を積極的に提供することと「弱いつながり」をつくることに集約されます。後者は、子どもにとって家庭と学校という強い繋がりに、人間関係の選択肢を付加することを意味しています。
参加とアンケート
- 今回は、共催の組合員活動委員会の要望、協力で地区本部など9箇所をTV会議システムで中継し、札幌会場86名、各地56名と多くの方に参加いただきました。
- アンケートの回収は6割でしたが、73%の方が、大変良かったとの回答でした。
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